Reactive Infectious Mucocutaneous Eruption(RIME)

感染症

 先日、川崎病疑いとして近医より紹介となった小児で、最終的にマイコプラズマ感染症の診断に至った症例がありました。調べると、マイコプラズマの感染で川崎病やStevens-Johnson syndromeとよく似た皮疹・粘膜疹を呈することがあるとわかったのでまとめてみました。

1, 概要

 1967年にSieberらが、マイコプラズマ感染によるStevens-Johnson syndromeを報告1) しました。薬剤性と比較して、皮疹の割に粘膜疹が目立つという特徴から、それ以来、「Stevens-Johnson syndrome without skin lesions」,「Fuchs syndrome」などの疾患名で報告されるようになります。

 2015年には、後述する、薬剤性のいわゆるStevens-Johnson syndromeと感染性のものとの特徴の違いから、これらを区別するため、Mycoplasma pneumoniae‐induced rash and mucositis(MIRM)という名称に変わりました2)。この名称でNEJMの「IMAGES IN CLINICAL MEDCINE」にも掲載3) されています。

 その後、他の細菌およびウイルス性の呼吸器感染症でも、粘膜皮膚反応を引き起こす可能性があるという報告に基づいて、MIRMは、本サイトの題名にある、Reactive Infectious Mucocutaneous Eruption(RIME)と呼ばれるより広い概念として分類することが提案されています。

 なお、以下のような微生物がRIMEの原因となりうるようです。

 Chlamydia pneumoniae, human metapneumovirus, parainfluenza virus type 2, influenza B virus, rhinovirus, enteroviruses (including coxsackievirus), adenovirus, norovirus, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2)

2, 疫学

 Stevens-Johnson syndromeとRIME(MIRM)を比較した文献4) によると、RIMEは主に小児(平均年齢12歳)に発症しますが、成人の症例もまれに報告されています。男性に多く、冬季に最も多く発生します。

 また、先行する呼吸器症状(平均7~10日前)や非定型肺炎の所見も鑑別点となりそうです。

3, 診断

 RIMEの診断基準として確立したものは現時点ではありませんが、以下の項目が提案されています2) 5)

●粘膜皮膚発疹が体表面積の10%未満である

●2つ以上の粘膜部位に病変がある

●皮膚の水疱性病変または非定型的標的状病変が少数である

●投薬歴なし

●過去7~10日以内に前駆症状(咳、発熱、倦怠感など)あり

●感染誘因(最も一般的にはM. pneumoniaeC. pneumoniae、呼吸器感染をきたすウイルス)を示唆する臨床的、画像・検体検査的な所見

 また、RIMEは成人では非常にまれであるため、診断基準に「若年である」ことを追加することも提案されているようです。

4, 治療

 RIMEの治療は、エビデンスに基づいた確立された治療法はありませんが、Stevens-Johnson syndromeに準じて行われます。相違点は抗菌薬投与を行う可能性がある点でしょうか。支持療法として、皮膚・粘膜ケア、水分と栄養の管理、疼痛管理を行います。

  • 抗菌薬 
    • 臨床経過、検体検査や画像所見から市中肺炎を疑う患者には、M. pneumoniaeC. pneumoniaeをカバーする抗菌薬であるマクロライド、テトラサイクリンなどで治療を行います。
  • ステロイド全身投与 
    • 広範囲の粘膜障害を有する患者に炎症と疼痛を軽減するために使用されることがあります。投与する際は、PSL 1mg/kg/日を5〜10日間、漸減なしで投与します。

5, 予後

 Stevens-Johnson syndromeとは対照的に、RIMEの死亡率は非常に低く、死亡率は3%との報告もあります。

 ただし、眼や性器の粘膜における色素変化、瘢痕形成や癒着などの粘膜皮膚後遺症は約10%の患者に発生するようで注意が必要です2)

今回の記事をまとめます。

 マイコプラズマやウイルスの気道感染は、Stevens-Johnson syndromeのような粘膜疹を起こすことがあり、RIMEとよばれる。

 RIMEの治療はStevens-Johnson syndromeと同様であるが、肺炎の所見があれば抗菌薬追加を検討する。

 RIMEの予後は良いが、後遺症に注意する。

 個人的には今回の症例を通して、気道症状の目立つ不全型川崎病、薬剤投与歴の乏しいStevens-Johnson syndromeでは、RIMEも鑑別として挙げたいと思いました。

参考文献
  1. Sieber OF Jr, John TJ, et al : Stevens-Johnson syndrome associated with Mycoplasma pneumoniae infection. 1967. JAMA 200: 79-81. PMID:4291843
  2. Theresa N Canavan, et al:Mycoplasma pneumoniae-induced rash and mucositis as a syndrome distinct from Stevens-Johnson syndrome and erythema multiforme: a systematic review. J Am Acad Dermatol. 2015 Feb;72(2):239-45. PMID:25592340
  3. Hongzheng Lu, and Bin Zhang:Mycoplasma-Induced Rash and Mucositis. NEJM Vol 389 No.17, 2023.
  4. Mohamed Ben Rejeb, et al:Mycoplasma pneumoniae-induced rash and mucositis: A new entity. Indian J Dermatol Venereol Leprol May-Jun;88(3):349-353. 2022. PMID:33871210
  5. Daniel Lofgren, Christopher Lenkeit:Pneumoniae-Induced Rash and Mucositis: A Systematic Review of the Literature. Spartan Med Res 2021 Aug 30;6(2):25284. PMID:34532621

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